石油製品や潤滑油は、低温になると粘度が上がり、条件によっては流動性を失います。そのため、製品が低温環境下でも適切に使用できるかを確認する指標として「流動点」が用いられます。
流動点測定は、製油所での出荷判定、潤滑油メーカーでの配合評価、分析会社・試験機関での規格試験など、石油製品や潤滑油の品質管理に欠かせない試験の一つです。
本記事では、流動点の基礎知識や関連する規格、手動測定における課題、自動測定を導入するメリットについて解説します。
流動点とは
流動点とは、石油製品や潤滑油が、規定の条件下で流動性を保てる最低温度を示す指標です。流動点が低いほど、より低温の環境でも流動性を維持しやすいことを意味します。
JIS K 2269では、試料を45 ℃に加熱した後、規定の方法で冷却し、試料が5秒間まったく動かなくなった温度に2.5 ℃を加えた値を流動点とします。
流動点は、軽油・重油などの燃料油、作動油・エンジンオイル・工業用潤滑油などの低温特性を評価する際に用いられます。品質管理の現場では、製品規格への適合確認や、ロットごとの品質確認、寒冷地向け製品の出荷判定などに活用されています。

曇り点・析出点との違い
石油製品や潤滑油の低温特性を評価する際は、流動点だけでなく、曇り点・析出点といった関連指標もあわせて確認されることがあります。
| 指標名 | 定義 | 主な規格 |
| 流動点 | 45℃に加熱した後、試料をかき混ぜないで規定の方法で冷却したとき、試料が流動する最低温度 | JIS K 2269、ASTM D6749、ASTM D97、ISO 3016 |
| 曇り点 | 試料をかき混ぜないで規定の方法で冷却したとき、パラフィンワックスの析出によって試験管底部の試料がかすみ状になるか曇り始める温度 | JIS K 2269、ASTM D7683、ASTM D2500、ISO 3015 |
| 析出点 | 航空燃料などにおいて、試料を冷却した際、生成した炭化水素の結晶が、試料の温度を上昇させたとき消える温度 | JIS K 2276、ASTM D8615、ASTM D2386、ISO 3013 |
曇り点は、油の中でワックス成分などが析出し始める温度を示します。一方、流動点は、試料全体として流動性を保てる限界を示す指標です。
そのため、曇り点は「析出の始まり」、流動点は「流動性の限界」を確認するための指標と整理できます。どの指標を重視するかは、対象となる油種や用途、求められる品質管理項目によって異なります。
流動点測定が品質管理で重要な理由
流動点は、石油製品や潤滑油が低温環境でどの程度流動性を保てるかを示す指標です。単に「低温で固まりにくいか」を確認するだけでなく、製品規格への適合確認、出荷判定、配合評価、季節品の切り替えなど、品質管理の根拠値として活用されます。
特に、石油会社・製油所、潤滑油メーカー、分析会社・試験機関では、流動点の測定結果が製品の合否判定や試験成績書に関わるため、安定した測定精度と再現性が求められます。
軽油の季節・地域別出荷判定
軽油は、使用される季節や地域によって求められる低温特性が異なります。JIS K 2204では、流動点の違いにより軽油の種類が区分されており、冬季や寒冷地向けの製品では、より低い流動点が求められます。
そのため、製油所ではブレンド後や出荷前、季節品への切り替え時などに流動点を確認し、規格に適合しているかを判定します。流動点は、軽油のグレード管理における重要な確認項目です。
重油の受入・出荷・貯蔵管理
重油は、低温になると粘度が上がり、貯蔵や移送がしにくくなる場合があります。特に冬季や寒冷地で使用される重油では、低温時の取扱性を確認するために流動点が管理されます。
受入時やロット確定時、冬期前の品質確認では、流動点を測定することで、貯蔵タンクや移送配管での取扱いに問題がないかを判断しやすくなります。
作動油・潤滑油の低温起動性評価
作動油や潤滑油では、低温時の起動性や送油性が重要になります。建設機械、工作機械、産業用設備などでは、低温環境下で油の流動性が不足すると、立ち上がり時の動作遅れや潤滑不良につながる可能性があります。
そのため、潤滑油メーカーでは、試作品の評価、寒冷地仕様品の開発、初回生産品やロット品の確認などで流動点を測定します。製品データシートに代表性状として流動点が記載されることも多く、品質を示す基本項目の一つとして扱われます。
配合開発・添加剤評価・原料変更管理
流動点は、基油の種類や添加剤の配合によって変化します。特に流動点降下剤を使用する場合、その効果は基油の組成やワックス成分の性状に影響されます。
そのため、研究開発部門では、基油選定、添加剤のスクリーニング、配合条件の最適化、原料ロットの変更確認などで流動点測定が行われます。少量サンプルで複数条件を比較する場面では、測定の効率化も重要になります。
手動測定が抱える実務上の課題
JIS K 2269に基づく手動法は、流動点測定の基準法として広く用いられています。一方で、日常的に多くの試料を測定する品質管理部門や分析室では、いくつかの実務上の課題があります。
測定精度の個人依存性
手動測定では、試験管の取り出し方、傾け方、5秒間の目視判定などを作業者が行います。そのため、同じ試料であっても、作業者の熟練度や確認のタイミングによって測定結果に差が出る場合があります。
また、流動点測定では、冷却中に形成されるワックス結晶の状態が結果に影響します。試験管を取り出して傾ける操作により、ワックス結晶の構造が乱れると、本来の状態とは異なる測定結果につながる可能性があります。
測定中の作業拘束が発生しやすい
手動測定では、2.5℃下がるごとに試験管を取り出し、流動性を確認する必要があります。流動点が低い試料ほど測定時間が長くなるため、作業者は一定間隔で装置の状態を確認し続けなければなりません。
その結果、他の分析作業と並行しにくくなり、多検体を扱う試験室では作業効率の低下につながることがあります。
冷却浴や寒剤の管理が必要になる
手動測定では、低温条件をつくるために冷却浴や寒剤を使用します。使用する温度域によっては、ドライアイスや有機溶剤などを扱う必要があり、準備・管理・廃棄の手間が発生します。
また、低温環境での作業が続くため、作業者の負担や安全衛生面への配慮も必要になります。
記録・転記作業が残りやすい
手動測定では、目視で確認した結果を記録し、試験成績書や社内管理表へ転記する運用が残りやすくなります。転記ミスを防ぐための確認作業も必要になり、品質データ管理の面で負担が増える場合があります。
製油所や潤滑油メーカー、分析会社・試験機関では、測定結果の正確性だけでなく、データの記録性やトレーサビリティも重要です。そのため、手動測定の運用では、作業者の負担とデータ管理の両面に注意が必要です。
自動流動点試験器へ移行するメリット
手動測定における課題を解消する方法として、自動流動点試験器の導入が進んでいます。自動測定では、冷却、判定、記録までの工程を装置側で管理できるため、測定の標準化や作業効率の向上が期待できます。
測定の標準化につながる
自動流動点試験器では、センサーによって流動性の有無を判定します。作業者による目視判定が少なくなるため、担当者ごとの判断差を抑えやすくなります。
特に、試験管を傾けずに測定する方式では、冷却中に形成されるワックス結晶への影響を抑えながら測定できます。軽油や寒冷地向け潤滑油のように、数℃の差が品質判定に関わる試料では、測定の再現性を高めることが重要です。
測定時間の大幅な短縮
自動流動点試験器では、装置が冷却条件や判定タイミングを制御するため、手動測定に比べて作業者の介入を減らせます。低流動点試料の測定でも、作業者が一定間隔で確認し続ける必要が少なくなり、他の分析業務と並行しやすくなります。
多検体を扱う品質管理部門や受託分析機関では、測定時間の短縮だけでなく、装置占有時間や作業者の待機時間を減らせる点もメリットです。
少量試料で測定できる機種もある
JIS K 2269の手動法では、試料量として45mLが必要です。一方、自動試験器の中には、より少量の試料で測定できる機種もあります。
研究開発段階の試作品や、高価な基油・添加剤を用いた配合評価では、試料量を抑えられることが大きな利点になります。また、試料量が少なくなれば、測定後の廃液量や洗浄作業の削減にもつながります。
データ管理を効率化できる
USBやEthernetなどの外部出力に対応した自動試験器では、測定結果を電子データとして出力できます。LIMSや社内システムと連携できれば、手書き記録や転記作業を減らし、データ管理の効率化につながります。
試験成績書の作成、社内の品質記録、監査対応などを考えると、測定結果を電子データとして扱えることは、品質保証体制の強化にも有効です。
田中科学機器製作のmpc-6について
田中科学機器製作の「mpc-6」は、ASTM D6749に沿った空気加圧法を採用した自動流動点・曇り点・析出点試験器です。
流動点、曇り点、析出点の3項目を1台で測定でき、石油製品や潤滑油の低温特性評価に活用できます。
JIS K 2269に掲載されている流動点測定は、試験管を傾けて流動性を確認する方式です。一方、mpc-6で採用している空気加圧法は、試料に微弱な空気圧を加え、そのときの液面変化をセンサーで検知する方式です。
測定原理は異なりますが、mpc-6では手動法と同等の結果を得ることができ、流動点測定の自動化します。

まとめ
流動点は、石油製品や潤滑油の低温特性を評価するための重要な指標です。製油所での出荷判定、潤滑油メーカーでの配合評価、分析会社・試験機関での受託試験など、さまざまな品質管理の場面で測定されています。
JIS K 2269に基づく手動測定は基準法として広く用いられていますが、多検体を扱う現場では、作業者による目視判定、測定中の拘束時間、寒剤の取り扱い、記録・転記作業などが課題になる場合があります。
自動流動点試験器を導入することで、測定の標準化、作業効率の向上、試料量の削減、データ管理の効率化が期待できます。
田中科学機器製作のmpc-6は、ASTM D6749に沿った空気加圧法を採用した自動流動点・曇り点・析出点試験器です。流動点測定の省力化や品質データ管理の見直しをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
